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2009年6月 9日 (火)

冤罪について

足利事件が新聞やテレビで連日報道され、強引な取り調べをした捜査当局や上告を棄却した裁判所に対する批判が高まっている。サンデープロジェクトでは、田原総一郎が何人かの裁判官を名指しで上げ、「こんなやつらは逮捕すべきだ」と語っていた。私も全く同感である。

冤罪というと、稀にしか起こらないことのように思われがちだが、交通事犯や軽犯罪を含めれば年間数千のオーダーで発生していると言われている(浜田寿美男「自白の心理」岩波新書)。まさに、明日は我が身なのだ。

 私は、昔から冤罪事件に関心があり、現在冤罪被害者を支援するグループにも所属している。しかい、こういった運動に係る人々はリベラルの傾向があり、同時に死刑制度にも反対である場合が多い。しかし、私は死刑制度は絶対に存置させるべきだと考えている。

 冤罪をなくすためには、取り調べの全面可視化が不可欠だが、同時に「疑わしきは罰せず」の理念を貫徹させなければならない。これは、グレーは白と見なすことであり、それは、犯罪を立証できなかった真犯人たちを大量に野に放つことを意味するのだ。このような問題があるからこそ、捜査当局は、多少の冤罪はやむをないと考えているのだろう。

 私はそれでも冤罪をなくすことを優先すべきだと考えるが、この場合取り得る方法は、一つしかないはずだ。すなわち、グレーは無罪放免にするが、黒については厳罰化しかつ見せしめにするというものである。、

 しかし、冤罪被害者支援グループの多くは、この辺に関しての認識がいま一つ甘いように思われてならない。だからこそ、死刑を廃止せよなどといった脳天気なことが言えるのだろう。大量の真犯人が野に放たれれば、その先に大量の被害者たちがいるのだ。彼らの傾向として市民性善説があると思われるが、私に言わせれば、市民の約2割が犯罪予備軍であり、1割が実際に悪事に手を染めている者たちである。

ちなみに、私はハローワークで紹介された会社が3社続けてアウトロー系企業だったことがある。そのうちの1社は企業舎弟であり、社長が広域暴力団の構成員で、後に逮捕された。

この経験によりアウトロー系企業の連中が何を考えているか、普通の人々より少しは知っているつもりだ。彼らの多くは経済犯や知能犯だが、こういった連中は間違いなく法律や刑罰を睨んで悪事を行っている。そして、やつらにとって問題なのは、法律に抵触するかどうかではない。もっと言えば逮捕されるかどうかですらないのだ。唯一恐れているのは、逮捕された後裁判で実刑判決をくらうことなのである。だから、その心配さえなければ、どんなことでもするのである。

ある社長は、占有屋のようなことをやっていたが、民法改正により規制が強化された途端、その仕事から手を引いてしまった。

アウトロー系企業にとって実刑判決をくらうことは、経済上のリスクなのである。リスクが低ければその行為を何度でも繰り返すし、高くなればその仕事から手を引く。故に、罰則を強化しなければ、やつらのやりたい放題の犯罪者天国になってしまうのだ。

グロバール化によって、この傾向にさらに拍車がかかる。犯罪という経済行為にとって刑罰がリスクであるということは、世界共通である。以前にも触れたが、中国では麻薬犯にはとりわけ厳しく運び屋をしただけでも死刑になる。ということは、麻薬取引を行う上で、中国はリスクが高いということになる。であれば、国境を越えリスクの低い日本で同じことをした方が、経済合理性にかなっているということになる。というわけで、グロバール化社会では、刑罰のぬるい国に犯罪が集中していくこととなる。人件費の安い海外に生産拠点が移り、産業が空洞化しつつある中、その一方で、犯罪が海外から流入してきたら、泣きっ面に蜂ではないか。

日本では、詐欺罪は立証しにくいためなかなか逮捕できず、刑務所は、万引きや無銭飲食で捕まった知的障害者やホームレスで溢れかえっている。こういう知的能力の劣った捕えやすい人々ばかりを有罪にして、本当の悪者を取り逃がしているのが、現在の刑事制度の実態なのだ。

これには法律の問題もあり、例えば、結婚詐欺など実際に婚姻届を提出して入籍してしまえば詐欺罪は成立しないため、この手口は何度でも使え、当然前科にもならない。

しかし、膨大な数に及ぶ詐欺を立証し有罪にすることは現実には不可能であろう。そのためには、大量に警察職員を増員し、莫大な予算を投入しなければならない。それは明らかに不経済だし、また、そのような警察国家にすることは健全ではない。だから、現実的には、一罰百戒の見せしめ的方法を取るしかないはずなのだが、日本の刑事制度はこれを否定している。見せしめは、何もそんな理不尽なことではなく、アメリカなどでも現に行われている。例えば、ネズミ捕りのように、犯罪類型、地域、期間を限定し、集中的に捜査を行うというような方法がとられている。そして、運悪く網にひっかかった犯人に対して、思いっきり重罪を科せば、当然抑止効果になる。「疑わしきは罰せず」の理念を貫くためには、このような刑事政策とセットで考えなければならないはずで、真剣に冤罪をなくしたいと考える者こそ、死刑存置派でなければならないのだ。

なぜなら、見せしめで一番絶大な効果を発揮するのは死刑だからである。私は、詐欺罪でも悪質なものについては、死刑にすべきだと考えている。

1985年豊田商事事件が起こった。地金を使った悪質商法により、被害者は高齢者を中心に数万人、被害総額は2000億円に及んだと言われている。会長の永野一男は逮捕当日、刺殺されている。

犯人は二人だったが、主犯格の飯田篤郎は、鉄工所経営者だった。刺殺した後飯田は、

「殺ってきた。犯人が俺や。警察呼べや。これで死んどらんかったら、またやったる。87歳のボケ老人騙しくさって、850万円もとったやつやからな。当然の報いじゃ」

そして、駆け付けた警察官に対して、

「法律は手ぬるい。わしがやらんかったら、他にやるものはおらん」

と言ったという。

その後、犯人の二人には、懲役10年と懲役8年の実刑が確定した。温情判決だった。

私は飯田のこの言葉に100パーセント共鳴する。永野のような極悪非道の犯罪者に対しては、たとえ人を殺してなくても死を与えることこそが、国家権力の使命なのだ。

永野の死後、豊田商事の残党たちは全国に散らばり、また、悪質商法を始めたという。

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